今、科学者たちが注目している小惑星があります。
2024年12月に発見された小惑星「2024 YR4」が、2032年12月22日に地球へ衝突する可能性を秘めているというのです。
この衝突の確率は観測データが更新されるたびに変化しており、一時期は3.1%まで上昇したものの、現在は0.28%程度まで下がっています。
直径40~100メートルほどの大きさとされるこの小惑星が、もし本当に衝突したらどうなるのでしょうか。
地球への衝突を防ぐ方法とあわせて解説します。
小惑星が地球に衝突する確率と変動する理由

- 小惑星:宇宙空間にある岩石の天体
- 隕石:地球に落ちてきた宇宙の岩石
小惑星「2024 YR4」は、まだ宇宙空間にあるため「小惑星」と呼ばれています。
大気との摩擦で発光している状態は「流星」、燃え尽きずに地表に到達した破片は「隕石」として分類されることになります。
小惑星「2024 YR4」の地球への衝突確率は現在約0.28%となっています。
発見当初は1%程度だった確率が3.1%まで上昇し、その後観測データが蓄積されるにつれて現在の0.28%まで下がってきました。
この確率変動には明確な理由があります。
小惑星の衝突確率は観測による軌道推定から導き出されるため、観測回数が増えるごとに誤差が小さくなり、精度が向上するのです。
新発見の小惑星では、最初はデータが少なく地球接近時の位置予測範囲が広いため、計算の仕組み上いったん確率が上昇します。
しかし観測が進むにつれて軌道がより正確に把握され、衝突リスクの確率が最終的にゼロ付近へ収束していくことは科学者の間では想定内のプロセスとなっているようです。
実際にESA(欧州宇宙機関)も今回の確率変動は予想通りのパターンだったと発表しており、観測技術が正常に機能している証拠といえます。
小惑星が地球に衝突したらどうなる?

40~100メートルサイズの小惑星2024 YR4が地球に衝突すれば、大きな被害が発生します。
たとえば100メートル程度の大きさの小惑星が衝突すると都市の破壊や巨大津波による甚大な被害をもたらすとされています。
1908年ロシア・シベリアに直径約60メートルの小惑星が落下した「ツングースカ大爆発」を見ると、半径30~50キロメートルの森林が炎上し、東京23区と同程度の範囲の樹木がなぎ倒されたそうです。
より大規模な衝突というと、恐竜絶滅の原因となった6600万年前の事例があげられます。
直径10~15キロメートルと推定されている小惑星の衝突は壊滅的な連鎖反応を引き起こし、世界の気温が変動し、大気には噴霧や粉塵が充満し、山火事が発生しました。
48時間以内に津波が世界を襲い、その威力は地震によって起きる現代の津波の数千倍に達していたと推測されています。
小惑星「2024 YR4」のサイズでは地球全体への影響はそれほど無いと思われますが、衝突地域とその周辺では深刻な被害が予想されます。
小惑星が地球に衝突するのを防ぐ方法はある?

現在の技術では、小惑星の地球衝突を防ぐ方法がいくつか実用段階に入っています。
地球衝突への10年程度前に発見できれば現在の技術でも回避が可能であるとされており、実際に対策技術の実証実験も成功しています。
最も有力な方法は、小惑星に宇宙船を衝突させて軌道を変更する「キネティック・インパクター」と呼ばれる手法です。
2022年9月にNASAが実施した実験では、無人探査機「ダート」を直径約170メートルの小惑星ディモルフォスに衝突させ、軌道変更に見事成功したのです。
より大型の小惑星に対しては周辺で大爆発を起こすなど別の方法が必要となるようですが、重要なのは早期発見であると言われています。
ちなみに、今回衝突の可能性があるとされている2024YR4に対しては、実はもう軌道修正が間に合わない可能性が高いようです。
現在の衝突確率が0.28%まで下がっていることを考えると、多額の経費をかけて軌道変更ミッションを実行することは合理的ではないと考えられています。
ただし、衝突確率が再び上昇した場合には、映画のような「緊急の軌道変更ミッション」や「小惑星破壊ミッション」が実行されるかもしれませんね。