ミステリークレイフィッシュというザリガニが日本で発見され、話題になっています。
ミステリークレイフィッシュは、オスがいなくても自分だけでクローンを作り出すことができる特別なザリガニなのです。
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一体どんな突然変異がこのような現象を起こしたのでしょうか。
このクローンザリガニの突然変異がいつどこで起きたのか、人間がクローンを産む可能性について解説していきたいと思います。
クローンザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」とは?

他の国でマーブルクレイフィッシュと呼ばれているミステリークレイフィッシュは、メスだけで子どもを産むことができる特別なザリガニです。
通常の生き物はオスとメスで子どもを作りますが、ミステリークレイフィッシュはメス一匹だけで自分と全く同じ遺伝子を持つクローンを作り出します。
ミステリークレイフィッシュが生まれる仕組みは「単為生殖」と呼ばれ、卵が受精しなくても発達して個体になる現象です。
このため、一匹のメスから生まれる子どもたちは、すべて母親と同じ遺伝情報を持った完全なクローンとなります。
ミステリークレイフィッシュは短期間で大量に増殖することができるため、現在では世界各地で生態系への影響が心配されている状況です。
クローンザリガニの突然変異はいつどこで起きた?

クローンを産むザリガニは、1995年頃のドイツで発見されました。
当時、ドイツではアメリカザリガニの仲間が観賞用として人気を集めており、多くの人が水槽で飼育していたそうです。
ところが、ある時期から交配していないメスのザリガニが卵を産んで子どもを作り始めたのです。
この突然変異は、染色体の数が通常の2倍体から3倍体に変化したことが原因でした。
染色体が増えることで、受精しなくても卵が発達できるようになり、クローンを作り出す能力を獲得したのです。
ちなみにこのクローンザリガニ、DNAの変化速度から逆算すると1988年頃に突然変異したのではないかと推定されています。
自然界への定着が確認されたのは、ドイツ、スロバキア、チェコ、ルーマニア、ハンガリー、ウクライナ、エストニア、マルタ、イタリア、フランス、ポーランド、ベルギー。
アジアでは台湾・台北市の公園で大量発生が報告されています。
また、マダガスカルでは分布が急拡大しており、個体数は数百万規模と推定されています。
突然変異した人間がクローンを産む可能性はある?

結論から言うと、人間が突然変異によってクローンを産む可能性は現実的にはほぼ無いとのこと。
人間を含む哺乳類は「ゲノムインプリンティング」という仕組みを持っており、父親由来と母親由来の遺伝子が両方揃わないと正常な発達ができません。
また、人間の染色体は非常に複雑で、クローンザリガニのような3倍体への変化が起きても多くの場合は生存できない状態になるそうです。
現在の科学技術では「人工的なクローン技術」は存在しますが、自然な突然変異による人間のクローン誕生はやはり現実的ではありません。
ちなみにアブラムシやミジンコは時期的にクローンを産む期間があるようです。
ヤモリやコモドドラゴン、シュモクザメやトラザメもクローンを産むことが確認されており、短期間で個体数を増やすのに有利なのだそうです。