牛にシマウマの縞模様を描いた「シマウシ」が虫除け効果を発揮するという研究が、2025年のイグ・ノーベル賞生物学賞を受賞しました。
農研機構の研究チームは、牛をシマウマのような縞模様にすると寄ってくるアブや吸血性のハエが半減することを証明しました。
縞模様による虫除け効果が実証されたことで、環境にやさしく薬剤に依存しない”新しい害虫対策”として注目を集めています。
シマウマが自然界で身につけた縞模様の秘密が解き明かされるかもしれません。
シマウシに施されたシマウマ縞模様の虫除け効果

シマウシの縞模様に虫除け効果があることが科学的に証明されました。
研究では黒毛和牛6頭を使って実験が行われ、白黒の縞模様を描いた牛と何も描かない普通の牛とで比較検証されました。
その結果、縞模様を描いた牛に寄ってくる吸血性のハエの数は約半分まで減少し、牛が虫を追い払う動作も明らかに減ったのです。
この効果が生まれる理由は、昆虫の複眼が縞模様によって距離感を正しく把握できなくなり、牛の体に着地することが困難になるためと考えられています。
シマウマが自然界で身につけた進化を牛に応用したこの手法は、薬剤を使わない環境に配慮した害虫対策として畜産業界に革命をもたらすかもしれません。
従来の殺虫剤による対策では環境汚染や耐性がついた害虫に効かなくなるという問題が指摘されていましたが、縞模様なら安全で持続可能な解決策となる可能性があるのです。
シマウマの縞模様の効果とは?

とても目立つゼブラ模様なんて、草食動物としては致命的とも思えますよね。
人間のファッションの世界でも、ゼブラ柄と言えばヒョウ柄と双璧をなすアニマル柄です。
シマウマが進化の過程で獲得したこのド派手な縞模様は、長年にわたって研究者たちの関心を集めてきた自然界の謎の一つです。
でも今回の研究結果によって、シマウマの縞模様には少なくとも危険な害虫を遠ざける「虫除け効果」があることが明らかになりました。
白と黒が交互に並ぶ縞模様は、昆虫の目には距離感や対象物の輪郭を正確に捉えることを困難にし、結果として着地を妨げる働きをすると言われています。
そしてこの視覚効果は、ライオンなど肉食動物がシマウマへの距離や進行方向を測りにくくする効果があるのではないかとも考えられているのです。
シマウマの他にも虫除け効果がある動物はいる?

シマウマ以外にも、自然界には虫除け効果を持つ模様や特徴を備えた動物が存在しています。
アフリカに生息するオカピは、シマウマとは違うキリン科の動物ですが脚部に白い横縞模様を持っており、この縞模様が害虫から身を守る役割を果たしていると考えられています。
昆虫の世界では、チョウやガの羽に描かれた目玉模様(眼状紋)が天敵を威嚇する効果を発揮しており、視覚的な錯覚を利用した防御戦略として広く知られています。
また、ハチに擬態した無害なアブ・ハエやカミキリムシなど、危険な昆虫の外見を真似することで身を守る動物も多く存在します。
動物は進化の過程で様々な能力を獲得していきますが、シマウマの場合は生存確率の高い縞模様の個体が子孫を残し続けた結果、現在の美しいゼブラ柄になったと考えられているのです。