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国旗損壊罪の制定に反対する理由はなぜ?アメリカ合衆国が国旗より優先する理念とは

高市自民党総裁と日本維新の会が「国旗損壊罪」を制定する方針を発表しました。

自民・維新連立合意文書に盛り込まれた「国旗損壊罪」 SNSでは「当たり前のこと」「国家の象徴を守る」「高市さん仕事早いなぁ」(イザ!)

ご存じの方も多いと思いますが、世界の多くの国では自国の国旗を損壊されることに対して刑罰が定められています。

ところが、日本では「外国の国旗」損壊への罰則がありますが、日本の国旗については罰則がありません。

過去に日本の国旗に対する国旗損壊罪を作ろうという動きがありましたが、実現には至っていません。

なぜ反対する人がいるのでしょうか。

日本で『国旗損壊罪』制定に反対する人がいる理由と、アメリカでは国旗損壊が許されている理由について解説します。

目次

日本の国旗を破ったり燃やしたりしても罪にはならない

日本の国旗を守る男

海外の人が日本の国旗を破ったり燃やしたりする映像をたまに見ますよね。

国と国民に対してすごく失礼なことをされているのに、日本の法律では罪に問えないのです。

たとえば漫画「ワンピース」で麦わら海賊団が世界政府の旗を燃やし宣戦布告しましたし、主人公ルフィは砲撃をものともせずドラム王国の大切な国旗を守り抜きました。

まさに『国旗』とは国そのものであり、傷つけられたら牙をむかなければならない大切なものと考える人は多いのです。

にもかかわらず日本では、日本の国旗を損壊した場合に直接的に処罰する法律はありません。

外国の国旗損壊に対しては法律がある

外国の国旗を損壊した場合には外国国章損壊罪という罪が刑法に定められています。

外国の国旗や国章を公然に傷つける行為は相手国への侮辱となる可能性があり、外交問題に発展しかねません。

そのため、相手国政府の請求がなければ起訴されることはありませんが「2年以下の懲役または20万円以下の罰金を科す」と法律で定められています。

2012年、高市早苗議員らによって日本国旗を損壊する行為を処罰する法案が国会に提出されたことがありました。

この法案では2年以下の懲役または20万円以下の罰金という刑罰が提案されましたが、審議未了で廃案となっています。

日本の国旗に対する『国旗損壊罪』制定に反対する人がいる理由は?

日本の国旗を燃やす男

日本の国旗を傷つける行為を罰する「国旗損壊罪」の制定には、多くの反対意見があります。

最も大きな反対理由は『表現の自由』との関係です。

国旗を燃やしたり破いたりする行為は、時として政治的な意見を示す手段として行われます。

政府の政策や行動に強く反対する気持ちを表すために、国旗という国の象徴を使う人がいるのです。

こうした行為を罰してしまうと、政治的な意見を表明する自由が制限されてしまうという心配があります。

国旗への敬意を法律で強制することは、人々の心の中にある考え方や信条にまで踏み込むことになりかねません。

思想や良心の自由を守るべきだという立場から、国旗損壊罪の制定に反対する人も多いのです。

また、日本では外国の国旗を傷つけると刑法で罰せられますが、自分の国の国旗には罰則がないという状況になっています。

外国の国旗は守るのに自国の国旗は守らないというバランスの悪さを指摘する声もありますが、日本人らしいといえば日本人らしい法律ですよね。

国旗損壊罪の制定には、民主主義社会における基本的な権利とのバランスをどう取るかという難しい問題が含まれています。

さらに、実際に日本の国旗が傷つけられる事件はほとんど起きていません。

めったに起こらない出来事のために新しい法律を作る必要があるのか、疑問視する意見もあるようです。

アメリカ合衆国が国旗より優先する理念

自由の女神

世界には国旗を傷つけても罰則がない国や、表現の自由を優先する国があります。

その代表的な例がアメリカ合衆国です。

アメリカで国旗損壊(国旗を焼いたり汚したりする行為)が罪にならない主な理由は、1989年に最高裁判所が憲法修正第1条が保障する「表現の自由」に該当するという判決を出したからです。

  1. 象徴的な政治表現
    国旗を焼く行為は、不快であっても、政治的メッセージを伝える表現行為である
  2. 政府による思想統制の禁止
    政府が特定の思想や表現を「不快だから」という理由で禁止することは、憲法の精神に反する
  3. 表現の自由の核心
    最も不快で挑発的な表現こそ、憲法による保護が必要である

これによって「自分の国の国旗を燃やす行為は”表現の自由”として憲法で守られる」と認められることにりました。

この判決後、議会は何度も国旗保護法案や憲法修正案を提出しましたがいずれも成立していません。

アメリカでは表現の自由を重視するという理念が、国旗への敬意よりも優先されているということです。

ただし、州によっては独自の規定を設けているところもあるようです。

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