ロボット掃除機の代名詞「ルンバ」で世界的に知られるアメリカのiRobot(アイロボット社)が、2025年12月14日に米連邦破産法11条の適用を申請しました。
破産申請と同時に中国の企業である「Picea」(ピセア)がアイロボット社を買収することが決まっています。
「ルンバ」のiRobot、破産手続きを開始 中国PICEAが買収へ(ITmedia)
なぜアイロボット社は破産を申請するに至ったのでしょうか。
アイロボット社の破産の背景には、中国企業との激しい価格競争があります。
また、買収される予定だったアマゾンとの取引が規制当局の承認を得られなかったことも大きな原因となっています。
ルンバ・アイロボット社破産の理由と、買収するPicea Roboticsという企業について解説します。
ルンバのアイロボット社が破産申請した理由はなぜ?

破産を申請したアイロボット社には、いくつかの経営課題がありました。
最大の要因は、中国企業との価格競争です。
エコバックスやロボロックといった中国メーカーは、優れた性能を持つ商品を低い価格で提供し始めました。
その結果アイロボット社の売上は大幅に減少、2025年の第3四半期(7月~9月)には売上高が前年同期比で25パーセント減少しています。
もう一つの大きな問題は、アマゾンとの買収交渉が決裂したことでした。
2022年に、アマゾンはアイロボット社を約17億ドルで買収する計画を発表しました。
しかし、欧州連合(EU)をはじめとする各国の規制当局が、この買収によってロボット掃除機市場の競争が制限される可能性があると懸念。
結果、規制当局の承認が得られず、2024年に買収が中止になってしまったのです。
アイロボット社はこの買収成立を前提に経営を進めていたため、買収が破談になった衝撃は非常に大きなものでした。
その後、従業員の約3割を解雇し研究開発費も大幅に削減しましたが、それでも経営の立て直しには至りませんでした。
こうした長年の赤字が続く中でアイロボット社は事業を継続する手段がないと判断し、破産を申請する決断をしたわけです。
ルンバは競合他社製品と比較して高かった?

ロボット掃除機の市場は、ここ数年で大きく変わってきました。
以前はルンバが市場を独占するような状況でしたが、今では中国メーカーがシェアを大きく伸ばしています。
価格面では、ルンバは中国製品よりも割高な傾向にありました。
アイロボット社が2025年に発売した最も安いモデル「ルンバ コンボ エッセンシャル ロボット」の価格は約3万9300円。一方、中国のアンカーという企業の「Auto-Empty C10」は約2万9980円で購入できます。
さらに、エコバックスという企業の「DEEBOT N20 PRO PLUS」は3万円台で手に入り、水拭きとゴミ吸引の両方の機能を備えているのです。
ルンバの高級モデルになると、さらに価格差が広がります。
最上位モデル「Roomba Max 705 Combo」は約17万9800円ですが、中国メーカーの高級モデルも6万円から10万円程度で同等かそれ以上の機能を有しています。
品質の面でも、中国メーカーは急速に進化を遂げました。
かつては中国製品に対して品質への不安がありましたが、最新の中国製ロボット掃除機は自動ゴミ収集機能や自動モップ洗浄機能など、ルンバを上回る機能を搭載しています。
こうした価格と機能の競争力の差が、ルンバの市場シェア低下につながり、最終的にアイロボット社の経営悪化を招いたと言えます。
買収する中国企業Picea Roboticsってどんな会社?
アイロボット社を買収することになった企業は、中国の深圳に本社を置くPicea Robotics(ピセア・ロボティクス)です。
実は、この企業はアイロボット社にとって非常に近い存在でした。
Picea Roboticsは、アイロボット社の主要な生産委託先だったのです。
つまり、アイロボット社が設計したルンバの製造を実際に行っていた企業。
さらに、2022年以降、Picea Roboticsはアイロボット社の大口債権者となっています。
Picea Roboticsは単なる製造請け負い企業ではなく、自社でも「3i」というブランド名のロボット掃除機を製造・販売しています。
この企業は世界中で2000万台以上のロボット掃除機を製造してきた実績があります。
また、1300件以上の知的財産権を保有していることから、技術開発にも力を入れている企業だということがわかります。
Picea Roboticsは、中国のHan’s Laserグループという大手企業グループに属しています。
親企業は産業用レーザー技術で有名な企業で、Picea Roboticsの関連企業である「Picea Motion」は、精密な動き制御が必要なロボットアームや医療ロボット、航空宇宙産業用の精密部品を製造しています。
アイロボット社がPicea Roboticsに買収されることで、製品開発から製造販売までを一つの企業グループが手がけることになります。
これにより、コスト削減と開発効率の向上が期待されています。
Picea Roboticsは、ルンバの知名度と技術を活かしながら自社の製造・開発能力を組み合わせることで、より競争力のあるロボット掃除機を世界に提供していく計画のようです。







